12月初旬に刊行となる書籍『あわ居-<異>と出遭う場所-』。今日は、本書の見どころを3つに分けてご紹介します。
1.多様な視点からあわ居を象る
書籍『あわ居-<異>と出遭う場所-』は、あわ居のガイドブックではありますが、一方的にあわ居のことを私たち主宰者が語るのではなく、多様な視点から、あわ居という場所の実像を浮き彫りにすることを目指しました。
・「あわ居の研究」
教育学/人類学/アート/場づくり/文学といった各領域の専門家計6名とあわ居主宰の岩瀬崇との対談である「あわ居の研究」を収録し、ジャンルや領域を横断して形成されているあわ居という場所、またその実践の価値や意味を、多角的に浮き彫りにしています。
・「あわ居の記憶」
これまでに「ことばが生まれる場所」「あわ居別棟」を体験された計16名の方への体験者インタビューを収録し、それぞれの身体の中で感じられ、生きられたあわ居という場所、そこでの経験についてのプライベートな語りを掲載することで、あわ居という場所の実像や重層性が浮き彫りにされています。
・写真やイラスト、随筆
その他、子どもたちが描いた石徹白やあわ居の風景のイラストや、さまざまな方からご提供いただいた写真、あわ居主宰の岩瀬美佳子の3種の随筆などを掲載しています。
2.あわ居からわたしたちへ
本書はあわ居という局所的な場所についての書籍であることは間違いありません。しかし、この岐阜県の山奥で営まれ、そこを起点に生じていること、そこから展開していく思考や紡ぎ出されている知や言葉には、どこか社会や時代といったものとの繋がりが見えます。従って、そうした知や言葉にあふれたし本書を読む経験は、あわ居についてのみならず、今日の社会や時代を考えること、またその中にあって、かけがえのない生を展開していくこと、創造的な実践をひらいていくことに思考を巡らせるような、そんな経験になるのではないかと感じています。本書を通して、あわ居に蓄積されてきた知が、時間や空間を隔てた第三者にもリンクし、「わたしたち」の知へと開かれていくこと。そのダイナミズムを是非ご体感いただければと思います。
3.ブックデザイン
本書の装丁は、これまであわ居から刊行した『ことばの途上』『ことばの共同体』に引き続き、デザイナーの瀬川晃さんが担当されています。書籍のコンセプトを十二分に踏まえながら、斬新的で挑戦的な装丁を施していただいています。いろいろな解釈があると思いますが、個人的にはじめてこの装丁案を見たときに、『闘争としてのサービス』という本で、サービスがテキストとして捉えられている考え方を思い出しました。サービスはもともと意味のあるものではなく、それを享受したり使ったりする方によって、そこに意味や価値が言葉として付け加えられていくことで、不断にテキストとして更新されていくものである、そんな考え方だと私は解釈しています。対談者や体験者によりあわ居に付箋(=意味や価値)が貼られ、さらに本書を手にした方がそれを読みながらさらにあわ居に付箋を貼っていく。その過程であわ居は色彩が帯びていく。本書の装丁からはそんなイメージが喚起され、そしてまさにそれは本書そのものを表しているように感じられます(あくまで私見です)。また全体で364ページとなる書籍は、モノとしての存在感や重厚感も十分。モノとしての魅力、その存在感をぜひ直接お手に取って感じていただければと思います。
あわ居 岩瀬崇